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True love for great sound unites us.
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Lewitt社はAKG社を前身とする技術者が設立、オーストリアはウィーンに本社を置き新たなマイクを開発しています。既存のビンテージマイクを模倣するメーカーも多い中、独自の発想、デザイン、開発でこれからの新たなスタンダード目線でマイクを市場へと送り出しています。プロからコンシュマー向けまで多くをライナップしレコーディング、ライブ現場などでも目にする様になっていたので、筆者も気になっていたところ。
今回はそんなLewittからボーカル専用マイク、『PURE TUBE』をレビューしたいと思います。手元に届いたのはPURE TUBEマイク本体以外の周辺機器も含めたPURE TUBE Studio Set、持ち運びに便利そうなコンパクトなフライトケースにマイク本体、専用電源、ショックマウント、ポップフィルター、7ピンケーブルが上手に収納されており、それぞれのパーツはPURE TUBE専用に作られ、見た目にこだわりを感じます。
マイク資料を見てみると、周波数レンジ20〜20,000Hz、指向性はカーディオイドのみ、最大入力音圧132dBSPL、セルフノイズ7dB。大きさ、重さ等もマイクとしては比較的スタンダードな内容ですが、特出するのはノイズレベルが非常に低いこと。ボーカル専用マイクとしての開発段階で、半導体やコンデンサーを一切使わない真空管からのピュアな信号経路にこだわった為、チューブマイクなのにも拘らずノイズレベルが一般的なコンデンサーマイクの半分くらいなっています(他社チューブマイクと比べると更に低い)。これは歌い手の声量が低い、もしくはウィスパーで歌唱する時にマイクゲインを上げる場合、必然的にノイズフロアも多くなってしまう為、ノイズレベルが小さいことはボーカル録音時の大きなアドバンテージとなるでしょう。
マイク本体の色はシックなブラック、本体正面から見るとスケルトンになっており、内部に収納されている厳選された12AU7/ECC82真空管が見え電源をオンにするとオレンジ色に光るようになっています。個人的にはルックスグッド!そんなメカニック要素に今回歌唱をお願いしたKaedeさんも“テンションが上がる!”と言っていたので、デザインがポジティブな意識効果を生み出しているようでした。
付属のポップフィルターはマグネットでカチッとショックマウントに吸い付く様に装着出来るので、マイク本体やダイアフラム自体に毎回同じ距離でアクセス出来るのはエンジニア目線で見ると、こう言う細かいところはありがたいです。
さて、今回は真空管を使ったマイクということでスタジオではボーカルレコーディングの多くの場面でファーストチョイスなることが多く、同じく真空管を使用したNeumann社のビンテージマイクU67を並べて比較してみることにしました。U67と言えば1960〜70年代に多く使用され今でも人気が高く市場価格は120万を超えます。セッティングはマイクプリにRupert Neve Designsの5025 Dual Shelford Mic Preを繋いでUrei1176を針が振れるか振れないかくらい薄っすらコンプレッサーを掛けて録音してみました。
比較対象としては実際のボーカルレコーディングと同じ環境なので、リアルなレビューとなると思います。第一印象として高域から低域まで非常にスムーズな繋がりでバランスが良く、突出する周波数は感じられません。筆者は雑誌やWebレビューで新しく発売されるマイクをはじめ様々機材を試すことがありますが、その中には特徴的に高域が伸びていたり、ミックス時後処理が必要な製品に出くわすこともありますが、この『PURE TUBE』の音は本当に素直な質感を感じます。発音を捉えた時のトランジェント感も良く心地良い、チューブの良くある中低域の温かみを協調し過ぎて高域が物足りないこともない。
U67との比較では正直“どんぐりの背比べ”感がありスピーカーで聴く分には驚くほどネガティブな要素がない。マイク自体が持っているゲインもU67と同じくらいで扱いやすい印象。Aメロの少しウィスパーな歌唱も上手くキャプチャー出来ているし、サビで無理して張って歌ってもらっても最大入力音圧132dBSPLの余裕があるので歪みません。これは他のポピュラーなマイクに比べると8dBほどマージンがあるので、メリットが大きい。マイク入力の時点で歪まないので、声量がある、もしくはロック系の歌い方の為、チューブマイクでは歪んでしまう事で今までマイクの変更せざる得なかった場合も、そのままで大丈夫なのは有難いのではないでしょうか。
Lewitt Pure Tube Vocal Dry
Lewitt Pure Tube 2mix MirrorBallLounge
子音の出かたはU67に比べて聴感上、同じか若干聴きやすいかな?と思え、だからと言って高域が足りなく輪郭がボヤける訳ではないし、2~5KHz辺りの中高域の刺々しい耳障りさや張り出しもないので先の“素直”という表現がしっくりきます。マイクのネーミング通りの音質に少し驚きを覚えるくらい。
録音する音質も大事ですが、レコーディングする上でとても大事なのがモニター、パフォーマンスするのにヘッドフォンに返ってくる音もとても重要で、「歌っていて歌いやすくはっきり聴こえる」とのこと。実際に僕もブース側に行き自分でヘッドフォンをかぶり聴いたところ、PURE TUBEはスピーカーで聴くよりもヘッドフォンでの音像が近くに感じて、細かい表現が聴こえる、不思議なことにU67より落ち着いて聴こえるので安心感があります。
比較対象で立てたビンテージU67が価格的に120万以上、楽曲や声質によってはセットで20万のPURE TUBEのがクリアさを保ちつつも、前に押し出された聴こえ方がすると思うと他社同価格帯のマイクは並べると一目瞭然です。あくまでも、スタジオでビンテージのマイクが必要ではないと言うことではなくて同じ土俵で比べても、ボーカルのパフォーマンスを存分に引き出してくれる、そんなマイクです。配信用や宅録に使うなという訳ではもちろん全くないけれど、この製品はプロのレコーディングスタジオ向けの品質クオリティです。是非、冗談抜きで一度プロのエンジニア達に聴いて欲しい(笑)
作曲、作詞、歌
新潟県新潟市秋葉区出身
蟹座
カナダ・トロントでのバンド活動の後東京へ拠点を移し、2014年にミニアルバムを発売。 以降、楽曲制作・ライブ活動・イベント出演など、元気に音楽をつくり、歌っている
好きなもの/こと ビール、歩くこと、本を読むこと、手紙を書くこと
website >> https://www.kaedekobayashi.com/
youtube >> https://www.youtube.com/@kaedekbys
株式会社サウンド・シティ イマーシブdiv.部長
Music Producer/ Mixing ,Recording Engineer
株式会社Mixer’s Lab チーフEngineer歴任後、独立。フリーランスを経て現在は2024年に株式会社サウンド・シティイマーシブdiv.新設に伴い就任、エンジニア業と並行して活動中。
Bandサウンド、Vocalもの作品を得意としており、生きた声、楽器の音色は数多くのLiveレコーディング、劇伴、大編成録音からの経験も生かされている。
近年はドラマ、映画、アニメの劇伴製作が増え、映像に寄り添った音作りに定評がある。
Sound&Recording Magazine で3年間にわたるサラウンド記事連載、専門誌などへの執筆活動をこなす一方、専門学校HALで特別講師 としても現場で培った知識や経験を学生に伝えている。
株式会社ワイルドオレンジアーティスツにて音楽プロデューサーや作家マネージメントとしても活動中。