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FOHエンジニア四反田祐 氏 インタビュー

Feb 6, 2018 5 min read

LEWITT Content Team
Enthusiasts at work

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FOHエンジニア四反田祐 氏 - WANIMAの現場で活躍するLewittマイク

 

WANIMA chooses LEWITT! 最高のライブを、Lewittマイクで

 

現在のライブバンドシーンにおいて、最も勢いのあるバンドの1つであるWANIMA。中毒性のあるメロディーと印象的なな歌詞に加えて、オーディエンスを楽しませる最高のパフォーマンスが多くのファンを惹きつける。そんな彼らのライブでは、2016年夏のツアーライブより各所にLewittのマイクが使用されている。メンバーとも幾多のテストを重ね、Lewittマイクを採用するに至った経緯、そしてお気に入りのポイントなどを、ライブエンジニアリングを担当する四反田 祐氏に伺った。


このツアーからイヤモニを採用、ドラムの叩きやすさにも影響

 

Media Integration(以降MI):四反田さんがLewittマイクを知ったきっかけは?

四反田 祐 氏 (以降 四反田):WANIMAを一緒に手掛けているモニターエンジニアから教えてもらいました。最初に使ってみたのはキック用マイクのDTP 640REXで、デザインがよく「使いやすい、いい音」と感じました。そこから他のLewittマイクも試し始めて、ツアーの全般で使用してしまいました。

MI:Lewittマイクを使用してのツアーを終え、使用感や印象はいかがでしたか?

四反田:今回のツアーで一番良かったのは、最初に試したキック用のDTP 640REXですね。ダイナミックマイクとコンデンサーマイク両方が1つのユニットに収められていて、EQなどで過剰な音作りをしなくても安定したサウンドが得られます。

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MI:DTP 640REX本体にはキックに最適化したエンハンス切り替えが装備されており、何も処理をしないフラット、ダイナミックマイクだけをエンハンスするモード、ダイナミックとコンデンサ両方をエンハンスするモードの3種類が搭載されています。

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四反田:最初に現場で試していたときには両方をエンハンスする「++モードがいいんじゃないか」と皆で話していたのですが、個人的にはピンときませんでした。そこでフラットである「==モード」にしてみたところ印象が良かった。ある意味では「新しい」とも感じました。非常にナチュラルで無理やりな感じがなく、コンデンサー側は締まったローエンド、ダイナミック側はキレのあるアタックが得られます。この音が決め手となって、今回のツアーはDTP 640REXをずっと使い続けました。

MI:WANIMAのようなラウドなサウンドだと、ダイナミックもコンデンサもエンハンスする「++モード」が合いそうなイメージがありましたが、フラット特性が良かったということですね。

四反田:ドラマーや現場によっても変わるとも言えますね。WANIMAの場合は縦のビートが多いので、この設定が合っていたのかもしれません。そういう意味では、切り替えができるというのは非常にいいですね。

MI:WANIMAのライブではDTP 640REXだけでなく、ドラムキット全体もLewittでカバーしていただいてますね。マイクを変更したことによって音作りや、あるいはドラムプレイに変化などは感じられましたか?

四反田:このツアーからメンバーがイヤーモニターを使用するようになったので、マイクのニュアンスが以前よりもダイレクトにモニタリングできるような環境になりました。以前まではレコーディングなどでもよく使用されるコンデンサーマイクをシンバル用に使っていたのですが、このツアーからLCT 340に変更してみたんですね。

画像を削除しました。

MI:LCT 340、ペンシル型のコンデンサーマイクですね。

四反田:セッティングは特にそれまでとは特に大きな変更をせずに聞いてもらったのですが、ドラマーは「(今まで使っていたマイクより)ハイが出過ぎているように感じる」という反応だったんです。いつもと違う音だったので、叩きづらいという反応でした。メインスピーカーから出ている音は明らかにいい音が出ていたので、マイクを変えるという選択ではなくモニター用のシグナルを少しハイカットして試してもらったところ「これなら大丈夫」ということになりました。つまりLCT 340はそれまでのマイクと比べても周波数レンジが広いんですね。

MI:ライブ現場ではよりスピーディーな対応が求められると思いますが、以前のマイクに戻すのではなくLCT 340を使う選択をされたのはどうしてですか?

四反田:大きな理由としては、メインスピーカーからの出音が以前に比べて断然良かったからです。広すぎるものをカットすることは簡単ですが、ない帯域をブーストして作り出すことはできないからです。そういう意味でも以前のマイクに戻さなかったことはツアーを終えた今も良かったと思えますね。

MI:その他のマイクはいかがですか?

四反田:キックに使用したDTP 640REXは、ドラマーからも「踏み込みやすい、バスドラの鳴りがよく感じられる」という反応がありました。僕自身もそれまで使っていた定番のキックマイクよりも出音がいいと感じていたし、以前のように「作り込まれたキックの音」じゃなく「楽器がもつ本来の音」を忠実に拾ってくれている印象がよく、このマイクならどの会場に行っても迷うことがないな、と思いますね。

DTP 640REX

MI:ダイナミックマイクとコンデンサーマイクを同一のユニットに入れていることで位相ズレなどが起きず、それぞれの特性を生かした音作りができることもいいのかもしれませんね。

四反田:その通りです。特にステージのように大量のマイクがある環境では位相ズレの問題が減ってくれることに越したことはありません。とにかくキックのチューニングで迷う要素が減り、音作りの作業がスムーズになりました。


 

今までかけていたEQが、不要になった

 

MI:私たちも多くのエンジニアさんにLewittを紹介させていただいておりますが、多くの方が「このマイクなら大げさなEQ処理がいらない、素のままで十分いい音が出ている」という感想をいただきます。こういった感想が共通しているのが興味深いですね。

四反田:足りない部分が少ないからだと思います。特にローエンドで顕著に感じますが、限られた時間で音を作るライブエンジニアにとって「足りない部分がない」から。20年ほどこの仕事をしていますが、今までは「足りないから足す」という処理がほとんどで、それが当たり前と盲信していました。でもLewittのマイクを使い始めてからはそういったことがなくなった。バンド全体の音を整えるスタートラインが早くなりましたね。

MI:スタートラインが違うというのは、大きなアドバンテージですね。

四反田:フェスなど野外の会場の場合にはライブハウスのような壁の反射や小屋鳴りの影響を受けないので、特に良さを実感できますね。特にフェス会場のように、複数のアーティストが一同に集まる現場だと「キックに使っているマイクは何?」と聞かれることが多くなりました。

MI:大型イベントでは多くのエンジニアさんが緊急時の代用が効く「定番」のマイクを使っていらっしゃるケースが多いから、いつもと違う感じの音に敏感なのかもしれませんね。

四反田:そうですね。そんな会場でDTP 640REXの音を響かせると、エンジニアさんとしては「ピン」とくるみたいで、質問されるんです。そこでLewittのことや、DTP 640REXのこと紹介したエンジニアさんの中でも数名の方が購入したという話も少なくないんですよ。

MI:現場で活躍されているエンジニアさんにとって、他のバンドの音も貴重な情報源の1つですよね。おかげさまで私たちも日に日にLewittマイクに関するお問い合わせが増えていることを実感しています。

四反田:タム用のDTP340TTも素晴らしいマイクで、今まで使っていたマイクでは「かなりEQで作り込まないと」音にならなかったものが、ほぼフラットで行けるようになり、格段に音が良くなりました。現場に求められるタムそのものの鳴りとアタックがナチュラルに集音できるので、必要以上の処理が不要なんです。Lewittは総じてナチュラルさが一番のポイントですね。

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オーディエンスのためではなく、アーティストのために設置したLCT 550

 

MI:最近よくテレビでもWANIMAさんをお見かけすることが多くなりましたが、ボーカルのKentaさんにもLewittのMTP 550DMを使用していただいていますね。

lct550

四反田:Kentaくんと一緒にゲネリハの段階で元々使用していたマイクとMTP 550DMを比較して、最終的には本人の意見を尊重して決めました。Kentaくんは試してすぐに「こっちの黒いマイク(MTP 550DM)の方が、良いですね」という反応で、導入に至ったものですね。また細かいところですが、MTP 550DMはグリルのトップが平らな形状で、これが本人としては歌いやすさにも繋がっているみたいですね。彼らのパフォーマンスを一番近くで見ているマネージャーも「Lewittに変えてから、各楽器の分離が良くなって聞きやすくなった」という評価もありました。

MI:ギターアンプはいかがですか?ステージではコンデンサーマイクのLCT 550がセッティングされているのを拝見しました。

四反田:ギターのマイキングは、Shure SM57とLCT 550をセッティングしています。SM57は慣れの問題もあり、個人的にどうしても外せなかったのですが、LCT 550を使っているのはちょっと他の現場とは違う理由があります。実は、LCT 550の音はメインスピーカーからは出していないんです。

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MI:なるほど、オーディエンスが聴いている音はSM57だけの音ということですね?

四反田:はい。先ほども話した通り今回のツアーから各メンバーがイヤモニでモニターすることになったのですが、SM57の音だとギタリストが「自分が思うアンプの音とちょっと違う(弾きづらい)」ということだったので、急遽LCT 550をセッティングして混ぜてみたら「違いがなくなった」という反応になりました。ローエンドとハイエンドの質感をLCT 550で作り、ミドルをSM57で補っている感じですね。

MI:表のスピーカーに使用しなかったのはなぜですか?

四反田:WANIMAのパフォーマンスをずっと見てきているマネージャーさんから「音が良すぎる」という指摘があったからなんです(笑)Lewittを導入するまではSM57だけで音作りをしていて、マネージャーさんはその音がWANIMAらしいというイメージがあったようですね。なので「いつも通りの少し悪い(荒っぽい)感じでいい」と。それもあってメインスピーカーからの音はSM57のみ、モニターにはLCT 550を混ぜたものという構成にしました。

MI:メインスピーカーに出されなかったことは残念ですが、でもギタリストさんが「アンプからの出音に近い」と言ってくださったのは嬉しいですね。LCT 550はノイズも少なくワイドレンジのマイクというだけでなく、ニュアンスも漏らさず録ってくれるマイクだと思います。

四反田:LCT 550は自宅レコーディングでも試してみました。声量のある弾き語りの女性ボーカルに使ってみたのですが、「これ、自宅レコーディングの音?」と自分でも驚くほどのクオリティでレコーディングできたことも驚きでした。シンガーが声を張り上げたときにもピーキーな音になることなく、パフォーマンスの全てを捉えてくれる。特にボーカルの場合には、「このシンガーには合うけど、別のシンガーには合わない」といったケースも多々ありますが、そういう印象を感じさせない懐の広さもあります。使ってみて初めてわかる良さがたくさんあるマイクだなと思いましたね。


 

Lewittは、現場でよく名前が出るマイクになってきた

 

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MI:しばらくLewittマイクを現場で使用されてきて、「Lewitt」というブランドは第一線の現場ではどのように受け止められているのでしょうか?

四反田:僕も使い始めてまだ日は浅い方ですが、Lewittというブランドが「気になっている」エンジニアは非常に多いという印象から「現場でよく名前が出る」ブランドに変わってきたなという印象があります。デザインもいいし、何より音に文句がありません。良いマイクを作るブランドであると思っているので、Lewittならではのバウンダリーマイクなども作ってほしいですね。PA現場はマイクにとってもなかなか過酷な環境ですが、音質とタフさを兼ね備えたマイクをどんどん開発していってほしいですね。

MI:本日はお忙しい中、ありがとうございました。

収録: 2017年3月


 

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四反田 祐 プロフィール

1972年生まれ 兵庫県出身。1990年の大阪のPAチームへの加入よりエンジニアとしてキャリアをスタート。2010年にフリーランスに転向し、近年はWANIMA・BOREDOMS・OOIOOのFOHを担当。


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